引っ込み思案な若者・春木真人(柳家わさび)は、たまたま寄席で聴いた落語に惹かれ、今戸家小六師匠(ピエール瀧)に弟子入り志願する。落語界では芸も地位もある小六だが、普段はノホホンとした頼りない亭主。明るくしっかり者の女房・葵(田畑智子)がいなくては、夜も日も明けぬ愛妻家だ。小六宅に住み込みで働き始めた真人は、前座・今戸家小春という名前を貰い、晴れて落語家の世界の一員となるが、そこには悲喜こもごもの出来事が待ち受けていた―。
小六役にはNHK大河ドラマ「龍馬伝」を始め俳優としての活躍も目覚ましいピエール瀧、その妻・葵には「理想のおカミさん像!」と称された田畑智子。そして、春木真人役に抜擢されたのは、入門8年目となる二ツ目の落語家、柳家わさび。 ほのぼのと暖かい小六夫婦の愛情に包まれ、多くの落語家たちに叱咤激励されながら、一人前の落語家へと成長していく小春の視線を通じて、“笑いと涙に包まれた人生賛歌”を大きな感動とともに味わえる映画が誕生した。
近年、落語家を描いた数多くの作品が作られる中、いよいよ落語家自らメガホンを取った正真正銘の落語映画が完成した。監督は昭和の爆笑王・初代林家三平門下の林家しん平。史上初となる(社)落語協会の全面バックアップが実現し、更には東京に残る4軒の寄席(上野鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場)の協力により、楽屋も含め全寄席での撮影が行われた。
着物、小道具、お囃子に至るまですべてが本物であり、寄席の高座や楽屋風景、芸人同士のやりとりや独特な師弟関係なども忠実に再現、高座着への着替えシーンなど所作の美しさも必見だ。 また、寄席の大看板・柳家権太楼をはじめ、プラチナチケット必須の柳家喬太郎、春風亭小朝、若手の筆頭・隅田川馬石など、総勢40名を超える現役人気落語家が総出演。 落語と落語家への敬愛と、『男はつらいよ』“寅さん”シリーズを始めとする人情喜劇映画へのリスペクトをこめた監督の眼差しが、落語をより身近なものにしてくれるだろう。 |